ジャズの集客の難しさとその対応②

①の続きです。

大概古典となった芸術は外部からの保護を必要とする。というか学校の義務教育で学習対象に組み込まれている訳です。クラシック音楽や古典文学は学校で一通りは習いますでしょう?それは国が各種芸術の価値を勘案した上で、「これこれは最低限知っておかなければならない」と決めているんですね。もしくは国やメディアが振興している例。能や歌舞伎、文楽といった古典芸能はNHK教育で舞台が度々放送されますし、クラシックも『ららら♪クラシック』というクラシックの名曲や作曲家に焦点を当てる番組が毎週放送されている。美術はNHK教育では『日曜美術館』が放送されているし、民放では『美の巨人たち』がある。『美の巨人たち』はリニューアルによってかなり番組のトーンが変わってしまいましたが、それまでは古典美術だけでなく現代アートや意匠(「くまもん」など)を取り上げるなど、芸術の振興に一役買っていたと言える。

私の芸術全般の師匠は「今残っている芸術は理由があるから現存している。残る価値のない芸術は自ずと消えていく」と良く仰るのですが、ある程度外部からの保護が無いと消滅する可能性もあるのではないでしょうか。


前置きが長くなってしまいましたが、ジャズはこういったメディアで取り上げられることは非常に稀だ。しかも古典芸術の例に漏れず一聴しただけでは分かり難い音楽ときている。

個人的な意見なのですが、古典芸能に共通するのは”分かり難さ”と思うのです。作品を理解するにはある程度の知識(少し嫌味になるが教養と言い換えてもいいかも知れない)が必要だ。例えば、ショパンのエチュードOp.10-12『革命』は単純に聴くと「なんだか激しくて格好良い曲だなぁ」と思えるが、ショパンの祖国ポーランドへの想いが下敷きにあると知ると全く違った印象の曲に感じられる。高校で多くの人が学ぶ夏目漱石『こころ』は、漱石の講演集『私の個人主義』に代表される様な個人主義的思想が根底にあることを知ると、作中の先生の行動原理が腑に落ちる。ある静物画を観て「ああ綺麗な林檎だな」と単に思う人と、その果物というモチーフが当時では”肉欲や虚栄”を表すメタファーだと知っている人とでは作品への感じ方に大きく差があると言わざるを得ない。

ジャズは即興演奏が基本であり、上記の様なプレイヤーの思想や時代背景には影響されないと思う方もいるかも知れない。確かに往年のジャズジャイアンツでそういった作品を残している人は少ないと思う。ビリー・ホリディは『奇妙な果実』で黒人差別を告発したり、黒人差別と闘い続けたチャールズ・ミンガスなど、いるにはいますが全体の中では少数派。

但し、ジャズ、特にモダンジャズには伝統的なフォーマットやリズム、フィールがあるし、過去のジャズジャイアンツのトランスクリプションから即興演奏のヒントを得て、それを多くのミュージシャンがライブで再現しているのだから、クラシック音楽の様に古典の伝承が行われている音楽と十分に言えるのではないかと思う。

よって所謂モダンジャズもある程度は古典である自覚を持って、その形式や歴史的背景を解説する様な機会が無いと、聴く人が減るのは凡そ自然であると思えるのだ。果たして現在お上にその様な働きかけをしている人が居るのだろうか。過去には山下洋輔さんが解説を務めていたジャズの音楽番組もあったらしいが、ああいう番組が今生れてくれないかと切望している。

では一介のアマチュアであり、凡百のジャズファンである自分に何ができるのか考えた結果を次に述べたいと思う。

(長くなったので続きます)


(補記)

前回の「ジャズの集客の難しさとその対応①」をアップしたところ、Facebook上で東京にてご活躍されている素晴らしいジャズドラマーの方からコメントを戴いた。ジャズを聴きに来るお客さんをタイプ別に大別・分析し、どういったジャズが観客に訴求力があるのかをご自身のブログで仰っていて、大変参考になったし、大きく首肯する内容だった。許諾を得ていないのでここでリンクを張ることは控えますが、ご興味のある方はコメントをチェックして下さい。

そのブログの中で、大きく同感したのがスイングが重要な要素であるという点だ。フィリーの発言とのこと、『ジャズは危機に瀕していない。人々はいつだって、足をふみ鳴らし、手を叩き、音楽を楽しむのが好きなんだ。』を読むと、確かにジャズに嵌った切欠は、単純にスイングのフィーリングが単純に「気持ち良かったから」、に他ならない。

昨今、若者向けのエンターテイメントは体験を売るビジネスモデルが主流と何かで読んだ。ジャズのフィールが純粋に「楽しい」ものと感じてもらえる機会を作るのも、若者にジャズを聴いてもらう為には重要かも知れない。

芸術って上で書いていた様な、所謂教養に基づいた分析も楽しむ上で重要なファクターなのですけど、何より「この作家の物語は読んでいて面白い」や「この画家の色使いは美しい」や「この作曲家のメロディは聴いていて切なくなる」といったフィーリングもとっても重要ですからね。頭でっかちで芸術を鑑賞しても、それはそれで楽しくないですからね。フィーリングとアナライジングのバランスが大事だと思います。


今後の演奏予定

7/13(土) 18:00~21:30
COS MUSIC FESTA
場所:丸亀城下の丸亀市民広場
ミュージックチャージ:なし
毎年恒例の香川・丸亀城下の広場で無料ライブが行われます。屋台もあり、お食事しながらライブを楽しめるイベントです。
私はポプシーズでの参加です。どうやらトリのようです。


7/15(月・祝) 18:30 Open、19:00 Start
『アニキのお楽しみ会!』
場所:高松 Nashville
シカゴバンドで高松のライブハウス「Nashville」で演奏します。全6バンドの対バン形式。


7/27(土) 18:30 Open、19:00 Start (2stage制)
西珈琲骨 Jazz Live 2019
場所:丸亀駅構内 駅カフェステーション

ミュージックチャージ:1,500円+1ドリンク)

西讃を中心に活動するジャズバンド、西珈琲骨のライブです。

普段はボサやファンク色の強いバンドですが、今回はかなりストレートなハードバップ中心の演奏をお届けできると思います。


8/11(日) 19:00~
詳細未定
場所:高松 Nashville

シカゴバンドで高松のライブハウス「Nashville」で演奏します。詳細は決まり次第、追加します。


8/31(土) 18:00 Open、19:00 Start
Bop Renaissance ライブ(詳細はフライヤーのページにて)
場所:瓦町Dining Turtles 香川県高松市瓦町2-2-22
ミュージックチャージ:1,500円 (学生1,000円)+1オーダー
50~60年代のストレートアヘッドなバップ期のジャズを愛するメンバーが集まり結成されたモダンジャズバンド。

今回はケニー・ドーハム特集ということで名盤『静かなるケニー』から中心に名曲をピックアップしてお送りします。
ジャズの初心者の方でも楽しめるであろう工夫を用意していますので、ジャズを余り聴いたことが無いという方もお気軽に是非お越しください。

この世は成り行き任せ~主にジャズに関する思考の残渣

香川県を中心に活動しているアマチュアトランぺッターが谷野穣がジャズに関してアレコレ書き散らします。

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