前回、前々回とCD文化を否定的に述べたが、サブスクリプションが最高のサービスかと言われると甚だ疑問でもある。世界中の古今東西あらゆるジャンルの音楽がアクセシブルとなった事で、失われたものもあるのではないか、と先月に東京在住の友人と語り合った。
確かに厖大なデータに瞬時にアクセス可能となったことは利便性を劇的に向上させたが、データの秘匿性は完全に失われたと、いうことである。簡単に言うと、音楽の一つ一つに"ありがたみ"が無くなったということだ。ご経験は無いだろうか。今やYouTubeでポンと検索すると大抵の50~60年代のジャズの名盤は聴けてしまう。1枚のレコードを何千円も出して買っていた頃とは、名盤に対するありがたみの度合いは異なると考えるのが自然だ。
思い出したのが世界的作家ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』という小説だ。この小説はある修道院の巨大な図書館に保管されている一冊の本を巡る連続殺人事件を描いた一種の探偵小説という体なのだが、読めば分かるが本質的には知の秘匿性を説いた作品である。主人公ウィリアムとその助手アドソは殺人事件を解決に導くべく迷宮の様な図書館を探索するのだが、これは図書館という知を外部に漏洩させないように試みる知的特権階級層と、知の解放を試みる男との対決なのである。その証拠に主人公のウィリアムはロジャー・ベーコンの弟子であるという設定になっている。(*)
この小説は知を外部に漏らさず特権的な階級に限定するのが良いのか、それともいかなる知であれ大衆に公開すべきなのか、というアンビバレントな問いを読者に投げかける。そう考えるとサブスクリプションの功罪も、遥か以前から議論されてきた流れの一部分ではないか、とも思える。当然歴史を紐解くと知は秘匿するのではなく万人に供給されるべきものとなっているので、人が人である限りその流れは決して止めることはできないだろう。
(しつこいですがもう少しだけ続きます。)
*ロジャー・ベーコン:英国の司祭だったが、理論や実験に基づく経験主義を貫き、教会に属する人間には異端の存在であった。
今後の演奏予定
10/19(土) 19:00~
瓦町Dining Turtlesセッション
場所:香川県高松市瓦町2-2-22
参加費:1,000円
フレンチレストラン「Turtles」さんでの月例セッションでホストを務めます。
初心者大歓迎のセッションなのでお気軽に遊びに来て下さいね!
10月26日(土) Open 18:30~ Start 19:00~
西珈琲骨 丸亀港Garage Bar OCEANS'11 Live in Oct 「A Night of Jazz」
場所:香川県丸亀市港町307-8 藤澤倉庫
ミュージックチャージ:2500円 ワンドリンク付
西珈琲骨として、丸亀港のGarage Bar OCEANS'11さんでのライブです。
ちょっとボサやサンバ、ファンクといったノリのいい曲を多めにお届けできると思います。
11/23(土) 18:30~20:30
丸亀ビッグバンドジャズフェス
場所:丸亀城大手門
ミュージックチャージ:無料
県内のビッグバンドが集まる音楽イベントです。
私はポプシーズの一員として参加します。
11/24(日) 時間未定
第14回丸亀ジャズストリート
場所:丸亀駅前各地
ミュージックチャージ:未定
BOP RENAISSANCEと西珈琲骨で出演します。パンフレットが刷り上がったそうです。まもなく詳細は追記します。
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